相補・代替医療が欧米諸国で興味を持たれて いる要因
相補・代替医療が欧米諸国で興味を持たれて いる要因には少なくとも次の3つが挙げられる。
①急性期疾患から慢性疾患中心の疾病構造の変化 により,治療から予防・健康増進へと医療の潮流 が大きく変化していること。
②各国の医療費の高 騰や医療財政の悪化。
③産業としての「保健・医 療・福祉」を考えた際,臨床および予防医学や健 康増進において,伝統医学や相補・代替医療が秘 める経済的可能性への期待である。
特に近代西洋医学と相補・代替医療による統合 医療分野の研究に対する米国政府の多額の資金投 入は,膨張し続ける高齢者保険をはじめとする国 民医療費の抑制と,健康・医療分野における産業 育成と経済の発展に繋がることを期待したもので あり,それらを念頭に置いた先行投資といえる。
また,欧米諸国では,いわゆる「伝統医学」は 相補・代替医療の一部として捉えられている。欧 米諸国における自国の伝統医学とは,正規の医 科大学や医学部,医学校で教授される “SchoolMedicine” である「近代西洋医学」であり,それ を正規の医学(Official Medicine)として医療制 度や教育制度が構築されている。但し,近代西洋 医学は,中世期に知識の伝承と発展が途絶えてい た古代ギリシア医学の流れを汲む欧州の伝統医療 が,ルネサンス期にイスラム圏の伝統医学である ユナニの知見の影響を多分に受け,その後18世紀 以降の近代科学の思想的基盤を成す近代合理主義 や産業革命による技術革新を取り入れながら発展 し,今日の旺盛を極めるに至っているのが医学史 上の事実である。
「☞コメント:欣治合理主義を重視するあまりに見捨てられてきた有用な医学理論が存在する事への帆江精が今日の東洋医学に尾再評価につながっつている事を付記しておきたい」
しかし,世界各国における現実の医療は,近代 合理主義を基盤とした近代科学による知識や技術 の集積のみならず,各地域の風土や民族特有の文 化や習k慣,法体系や諸制度にも影響を受けている。 医療と一口に言っても,国によってそれぞれ特徴がある。それは欧米諸国の相補・代替医療や統合 医療の現状においても同様である。
「☞コメント:医療は三因制宜に則るというのは伝統中国医学の基本的考え方である」
世界の統合医療の現状2/小野直哉
『鍼灸OSAKA108号』アラカルト
・世界の統合医療の現状(2)―欧米諸国(米国,英国,フランス,ドイツ,スウェーデン)/小野直哉
鍼灸OSAKA108号